拝啓、とても遥かな甲子園様

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※※※※※※ 諒は、ものすごーく野球大好きな母と、全く野球を知らない父の間に生まれた。 小さい頃からテレビでプロ野球を観ていて、 「この選手、どこからプロに入ったん?」 と、聞くと母が涼しい顔で高校名や大学名を答える。加えて、甲子園での活躍まで解説する。 反対に父は、「6-4-3って何だい?」と聞くほどの野球オンチ。 6-4-3だの、1-2-3だの、テレビで解説者が語る度に聞くので――おかんは、紙に書いて父に渡した。 母はバリバリの関西人で、物心ついた頃から、『おかんと呼びさない』としつけられた。 『だって……みんな、お友達はママとかお母さんって呼んでるよ?』 『関西では「おかん」と呼びます。諒が大きくなったら「ママ」なんて呼ぶのは、こっぱず恥ずしくなる。そやから先を見通しての事や。人間、先を見通すのが賢い生き方やで』 (今、振り返れば……小さい時に[トイザラス]で大声で『おかん~! これ欲しい』と叫んだ時、みんな周りが笑って見てたっけ) 思い出しても冷や汗が出る。 「パパ、ええか。野球には[守備番号]言うもんがあんねん。野球観てて、いちいち聞かれたら、ええ場面逃すからな。これ、テレビの横に貼っときよし」 「そうだね! ママ! ありがとう」 父は無二に人の良い、愛情溢れるひとだ。 おかんが主導権を取っているが、夫婦仲も良く、安らぐ家庭。 お互いの良いところを尊重しているのが視える。 飼い猫の[ルー]も、よく上下関係をわきまえている。 おかん→ルー→父→俺 (動物ってたいしたもんだよな)
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