拝啓、とても遥かな甲子園様

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おかんは、紙に書いてテレビ台に貼った。 ①ピッチャー(投手) ②キャッチャー(捕手) ③ファースト(一塁手) ④セカンド(二塁手) ⑤サード(三塁手) ⑥ショート(遊撃手) ⑦レフト(左翼手) ⑧センター(中堅手) ⑨ライト(右翼手) 「これ見て、自分で覚えてな。ええか、6-4-3言うのはな、ランナーが一塁にいました。バッターが⑥ショートゴロを打ちました。ランナーが、一塁から二塁に進塁するのを先にセカンドに投げて、アウト一個取って、④セカンドが③ファーストに投げてアウト取る。ダブルブレー取りました。言うわけや」 「ランナーは、一塁から動かない訳にはいかないのか?」 「いかないの」 「そう、じゃ1-2-3は?」 「満塁で、ピッチャーゴロを打ちました。①ピッチャーが本塁に投げて、点を取るのを阻止し、尚且つ②キャッチャーが③ファーストに投げて、打ったバッターをもアウトにするダブルブレーや」 「じゃあ、三塁ランナー、ホームに走らなきゃいいじゃない」 「満塁でっせ。塁、詰まってますがな」 「あー、そう言う事か!」 話にならない父にイラつかずに説明している。 「はい、後は[男は黙って野球観戦]や」 おかんは父を黙らせた。 諒も、思春期なりに、おかんに死ぬ程反抗したこともあった。 何をしても満たされず、親のほんの大した事も無い言葉じりに激怒して、部屋に篭ったことも。 父はオロオロしていたが、おかんは、金属バットで部屋の扉をぶち抜いた。 「お前の法律が世界を動かすんか!」
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