拝啓、とても遥かな甲子園様

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「どれか一個、秀でたらよろしいんや。諒はどれが得意や?」 考え込んだ―― [走] 足は……遅い。 [守] 守備は……ものすごく下手。 [攻] 身長はもう160センチある。体重もあるが……力だけはチーム一かな。この間も小学校のクラス腕相撲大会で優勝した。 「攻……かな?」 「ほんなら打撃を磨きなさい」 「打席にもそんなに立ったこと無いよ?」 「だから、今から磨きなさい」 「どうやって?」 「新聞紙とガムテープ持って来なさい」 (ええ? おかんはいつも、何を考えているかわかん無いや) 「今から上手くなれるの? 遅すぎでしょ」 「お前、何歳や? おっさんか! ちょっとそこらの少年野球で出来んことなんかあらへん。早よ持って来なさい」 仕方なく、玄関に積んである、新聞紙の束とガムテープを、よろよろと抱えながら、おかんに渡す。 「丸めなさい。ボール作るんや。丸めてガムテで固めて。固めたら、公園行くで!」
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