第一章 結婚の条件

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  本当に良かった。 リンさん、どうかこれから幸せになってくださいね。 目頭が熱くなることを感じ、慌てて空を仰いだ。 ネオンの先に美しい月が、その姿を現していた。 さて、帰ろうと一歩足を踏み出したとき、街頭から聴き慣れた歌声が耳に届き、 あ、カズさんの歌だ。 と可愛は思わず脚を止めた。 元akカンパニーの社員で、良き先輩だったカズさんは趣味で活動していたバンドが大手レコード会社の目に留まりデビューを果たし、見事に大ブレイクした。 今や出すCDは必ずランキング入りするほどの人気バンドだ。 みんな、自分の道を見つけて未来へと歩き出している。 私も……踏み出すんだ。 NYへ。 樹利の元へ! 可愛は顔を上げ、しっかりとした足取りで家路へと急いだ。
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