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そんな樹利が優雅に歩く姿は、通りすぎる人々の視線を集めていた。
洗練されたファッションに身を包み、スラリと高い背に整った美しい顔立ち。
何より特別なオーラを纏った樹利が注目されるのは、日本でもNYでも変わらなかったが、
自分の意思とは裏腹に常に注目を受け続けて来た樹利にとって、見ず知らずの人間が自分を見ては振り返ることなど、いつしか特別なことでも気に留めることでもなくなっていた。
大きな池のほとりのベンチに腰をかけ、秋の景色を眺めながら心洗われるような気持ちでいると、人に慣れたパークのリスがチョロチョロと姿を現した。
リスか、可愛が喜びそうだな。
笑みを浮かべて、ポケットの中からデジカメを取り出しリスを写真に収めた。
「ギャラも渡さず、写真だけ撮ったら駄目だよな」
そう漏らして、何かあげるものはないかとポケットの中を探り、何もないことに肩をすくめ、
餌がもらえないことに気付いたリスはチョロチョロと小走りで姿を消した。
樹利は小さく笑ってリスを見送ったあと、ゆっくりと身体を伸ばした。
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