第二章 NYへ

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  そんな可愛の様子に涼子は不安げに目を細めた。 「もしかして、社長から私のことを聞いていませんでしたか?」 「あっ、いいえ、聞いていました。ありがとうございます」 慌てて頭を下げると、涼子は「良かった」と安堵の表情を浮かべ、胸に手を当てた。 「これを社長から預かってきました」 そう言って内ポケットからカードを取り出した。 万が一のことを考えて、彼女が本当に樹利の使者であることを証明するために、直筆のサインが書かれたカードを預けておくことを聞いていた。 そして、そのカードには素っ気無く自分の名前だけが書かれていることも……。 『菅野樹利』 サラサラと書いたような読みやすい樹利の文字。 その文字から樹利のぬくもりが伝わるような気がしてジンワリと胸が熱い。  
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