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「これはじゃな、君のお父さんであるイザークさんが使っておった農具なんじゃ」
「あ、あの」
一生懸命に意志を伝えようとするが、老人は新たな牧場主の誕生以外頭に無い様子だった。
ルークが何度か老人に勘違いだと伝えようとするが、熱心に話す老人を見ていたらそれも忘れ、少しだけ父親の後を継ぐとこの人達はもっと楽しく暮らせるのかなと思い始め、いつの間にか老人に手を差し伸べられていた。
「どうか、わしらにもう一度イザークさんが居たときの楽しい夢を見させてはくれんかのぅ」
この人はきっと、俺がイザークの息子だから、イザークの血が流れているからきっと出来ると信じて手を差し伸べているのであろう………
老人の目は曇り一つ無い、強い意志を秘めていた。
「わ…わかりました。父のようにはいかないかもしれませんがなにとぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、そして自己紹介が遅れたが、わしの名はタロウという」
そして俺はタロウさんの老人とは思えないほどの手をがっちりと握った。
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