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プロローグ
親父が死んで一年………家にこんな手紙がきた。
普通ならば便せんの筈が少し色褪せた茶封筒に入っており一見手紙に見えなかった。差出人は俺の叔父に当たる人で世界中を行商人として渡り歩いているという。
そんな叔父から来た手紙の内容が父親が死んだので荷物を家まで運んでくれというのだ。
誰もが面倒がってやらないようなことだが、別にやることもなく暇であったためとりあえず行ってみるだけ行くことにした。
いつもなら口うるさい母もそういうことならと意外にもあっさりと出かけることを許してくれたのだった。
今更だが俺の名前はルーク。
高校を卒業し、家の家業を手伝って生活していた。
牧場を営む父には憧れを抱いていたが、母曰わくほとんど家に帰ってこないから浮気でもしてないか心配だという。
まあ、そう思われるほど女癖の悪い父であったが仕事に関しては誇りを持っていてどんなときも自分の考えを貫き通す人だった。
気づけばルークはバス停の前に立っていた。
「次のバスは20分後か」
父が営んでいた牧場があるところは俺の町から一つ山を超えた、緑あふれる地域にある町で人通りがなければ越していく人もいない。
しかしそんな町でも、父の働きぶりで祭りの時は町が溢れんばかりの人々が集まった。
それ故に父が死んだことにより、誰もが泣き崩れ父の死を悲しんでくれた。
それから町はまた父が来る前と同じように、人が一切集まらない寂れた町になってしまったらしい。
気づけばバスは長い山を抜けて、ほどよく海があり、緑深い町に出た。
「こんなに綺麗な町なんだがなぁ」
それがルークの中によぎる思いだった。
とても悲しみが込められた一言…………
そしてバスはゆっくりとタイヤを止めた。ルークは少し悲しいようなむずがゆいような気分でバスを降りる。
そしてゆっくりと町の路地に足を踏み入れたのだった。
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