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第一章 跡継ぎ
ルークはゆっくりと景色を眺めながら牧場のある父の家に向かっていた。
日差しが容赦なくルークを照らす………猛暑と言えばいいか。
町の第一印象としてあげることは、何といっても緑深き町の木々、そして日の光を鏡のように反射させる透き通る海。
つくづく俺は父が恨めしかった。
「親父は、こんなに良いところに住んでいたのか…」
すこし立ち止まって空を見上げたい気分だが、そこをぐっとこらえて足を動かす。
すると、まるでルークを待っていたと言わんばかりに木々達が道を作っていて、その道の先に周りとはすこし違う家が見えた。ルークは歩みを速め、木々に導かれながら道を歩く。
しばらくして広がった世界………
「すげぇ………」
思わず声に出すほどすごい光景が広がる。牧草が生い茂り、風車小屋の風車が元気よく回っていた。
その中心に周りよりも大きめの赤い屋根の家が建っていた。
ルークはゆっくりと歩みを進め、ドアの前に立つ。
「誰じゃ!!」
ドアノブに手をかけようとしたとき、後ろからだれかに声をかけられた。
振り向いてみれば、そこには60代半ば位の老人が錆び付いて今にも折れそうなクワを構えて立っていた。
「ここになんのようじゃ!!ここはお前みたいなガキが来ていい場所じゃない」
とても老人とは思えないほどの声を浴びせられたうえにゆっくりと近づいてきた。
やばいと思い、とっさに腕を挙げたときだった………。
ルークの服のポケットに入っていた、叔父からの手紙が落ちたのだ。
それと同時に老人は手紙の名前を見てこちらを向いた。
「この筆跡はアランさんのものじゃないか」
「え!?叔父の事を知っているのですか?」
思わずルークは老人にこう言ってしまったのだ。
しばらくして老人は目を輝かせながらルークに近寄ってきた。
「ということはイザークさんの息子のルーク君とは君のことかい?」
「は、はい…一応」
少し申し訳なさそうにルークがうなずくととんでもないことが老人の口から出た。
「ありがとう、君がイザークさんの後継ぎとして来てくれるなんて」
「へ?い、いや俺は別に………」
ルークが言おうとするのを強引に制して、勝手に話を進め始め、俺はただ呆然と老人を見ていた。
初め胸中ではふざけ半分でこの老人が言っているものだと思っていたが、ルークの目の前に出されたものにより真剣に話をしていることがわかった。
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