楽しそうな唄

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そう思いながらも、俺はパネルから目を離せずにいた。緑が心強く点灯している。 しかし次の瞬間、俺は再び凍りついた。また、赤が点灯した。今度は消えない。誰かが、何かが、診療所内にいる。 俺は、わけのわからないものが次第にこの宿直室に向かっているような妄想にとりつかれた。 慌てて携帯を探して、所長に電話した。数コールで所長が出た。 所「どうした?」 俺「ランプが!赤ランプがついてます!」 所「本当か?こっちには何も連絡ないぞ」 俺「だけど、今もついてて、さっきはすぐ消えたんだけど、今回はずっとついてます!」 所「わかった。ALS●Kに確認するから、しばらく待機していてくれ。また連絡する」 所長の声を聞いて少し安心したが、相変わらず赤が点灯していて、恐怖心は拭い去れない。 2分ほどして、所長から折り返しの電話があった。 所「ALS●Kに確認したが、異常は報告されてないそうだ」 俺「そんな!だって現に赤ランプが点灯してるんですよ!どうしたらいいですか?」 所「わかった。故障なら故障で見てもらわなきゃいけないし、今から向かう。待ってろ」 何という頼りになる所長だ。俺は感激した。赤ランプはそのままだが、特に物音が聞こえるとか気配を感じるということもないので、俺は少しずつ安心してきた。 赤ランプがついただけで所長呼び出してたら、バイトの意味ねえなwとか思って自嘲してた。 しばらくすると車の音が聞こえて、診療所の下を歩く足音が聞こえてきた。 三階の窓からは表玄関と裏玄関そのものは見えないが、表から裏に通じる壁際の道が見下ろせるようになっている。見ると、電気を煌々とつけて所長が裏玄関に向かっている。 見えなくなるまで所長を目で追ってから数秒後、「ピーーーーーッ」という音とともにALS●Kの電源が落ちた。所長が裏玄関の外から警備モードを解除したのだ。 俺は早く所長と合流したい一心で、襖を開けて廊下へ出た。廊下へ出た瞬間、俺は違和感を感じた。
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