終わりには常に始まりが憑いている

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俺は、多分歪んでたんだと思う。 俺の母は天才的な才能を持った科学者で、父も天才的な才能を持ったアスリート。そんな二人の間に生まれた二人の兄妹。俺はその兄妹の兄だった。将来は期待されていた、優秀な科学者かアスリートになる事を。 だが現実は悲惨だった。 学校のテストの点数は常に一桁。マラソンなんて完走できた事も無い。10mを軽く走っただけで息切れする。唯一良かった点を挙げるなら、顔の点数が多少高かった程度か。しかもそれは本当に多少なのだ、精々中の上と言った所 それに比べて妹は、容姿端麗、文武両道、才色兼備。おまけに人当たりも良くこんなダメダメな俺でさえも仲良く接してくれた。 これだけだったら俺も、歪む事は無かっただろう。だがその日は突然訪れた。 ───────妹が死んだ。 死因は事故死。居眠り運転で信号を無視したトラックが、学校から下校中の俺達の所に迫ってきた。その時俺は情けない事に目を瞑る事しかできなかった。 だがその時、不意に俺の体に軽い衝撃が走る。次に目を開けると、そこには在らぬ方向に手足を曲げて赤一色に染まった妹がいた。何故か倒れている。 この時に俺は理解した。 ───────妹が俺を庇って轢かれた。
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