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その後オレは街に出て行った。
わずか数日で担当のユニットは解散。
黒井社長にきっと首を切られるに違いない。
自分はなんてダメなプロデューサーなんだ。
765プロの研究の成果を認められてもらった絶好のチャンスを、完璧につぶしてしまった。
うつろになりながら歩く街には、トップアイドルの歌が流れていた。
(はぁ、けして歌唱力、ビジュアル、ダンス、どれをとっても美希と響と貴音なら負けないのに...)
どうしても彼女達を導けない。
それがどうしようもなく、悔しかった。
そんな時だった
「プロデューサーさん?」
不意に誰かに話しかけられた。
振り向くと、帽子を深く被った少女に呼び止められていた。
「わ、すいません人違いでした!すいませ..ってうわ!」
慌てふためいた彼女は、突然転んでしまった。
可愛いらいな、スカウトしようかと思って顔をよくみると
「き、君は天海春香さん?」
「へ?やだ、あたしのこと知っててくれてたんですか?嬉しいけど、恥ずかしいです」
ハニカミながら恥らう彼女に手を差し出し、起きあがってもらった。
「大丈夫?怪我ない?」
「はい!転んじゃうのは慣れてますから」
笑顔が眩しくて、まさにトップアイドルだった。
「すいません、じゃ私はこれで」
「待って...」
「はい?」
「オレは、そのこういうものなんだ!」
オレは名刺を取り出し渡した、すると彼女はびっくりしたのような顔で
「961プロのプロデューサーさん?」
「そうなんだ、君に聞きたいことがあるんだ」
「え?わ、私なんかにですか?」
「そうだ、君にしか頼めないことなんだ」
少し考え込む春香さん。
もちろん、ライバル会社の頼みなんてそう聞いてくれるはずない。
白昼堂々とスパイしようとしてるのだから。
困った顔の春香さん。
「ごめん、やっぱり無茶な話しだったよね」
申し訳なくて、つい引いてしまった。
さっき美希達に押し付けて傷つけたのが、どこか自分の行動を抑える枷になっていた。
軽く会釈してその場を離れようとした時、春香さんが顔を上げ
「いえ、少しだけならいいですよ」
と言ってくれた。
「ほ、本当に?」
「はい、でも少しだけ条件があります!」
そう言って彼女は、おもむろに携帯を取り出した。
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