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「響~~~待て、待ってくれ響~!」
店を出ると、響は走って逃げようとした。
すかさず追いかけようとするが、なにせ運動神経の良い響。
簡単に追いつけない。
それでもオレは追いかけた。
なんとしても、謝らなくちゃ、思いを伝えなきゃ
このまま何もできずに終わるなんて、そんなのは絶対に嫌だった。
「待ってくれ、今日のことちゃんと謝るから、オレには響が必要なんだ!!」
なりふり構わず叫んだ。
思ってることを素直に伝えなきゃ、彼女達には届かない。
まだまだ若い年頃の女の子に、理屈こねても何も伝えられないさ、分かり合えない。
そう春香さんから教えてもらったから。
すると、響はゆっくりと止まりだし、少し追いついたところで振り返り。
「プロデューサーのバカ!アホ!おたんこなす!!」
「はぁはぁ...はぁ...響?」
大量に流れる汗でよく響の顔が見えなかったが、どうやら少し泣いていた。
「自分、ちょっと言いすぎたと思って謝ろうとしたら、765プロと真剣に話してて..うぐ..自分...自分...」
たまった思いが溢れそうになっていた。
それでも、必死に伝えようとしてくれてる。
そんな状況で初めて気づく己の愚かさ。
「嫌だよ...自分もうわがまま言わないから..お願いだから...なんでもするから...だから....だから...!」
必死に必死に伝えようとする響。
それを見ることしかできない自分。
何もしてやれない、そうか、こんなに彼女のことを知らなかったんだ。
「765プロに行かないで!自分をプロデュースして!!自分嬉しかったんだプロデューサーがついてくれて!自分にはプロデューサーが必要なんだ...」
1人でできるなんていつも言っていた響。
しかし、彼女は言う。
自分にはプロデューサーが必要だと。
「バカ...オレがプロデューサー辞めるわけないだろ...」
「へ...本当?...本当に本当!?」
「当然だ、響達をトップアイドルにしたいんだよオレは」
ずっと言えなかった。
彼女達をトップアイドルにしたいということ。
どうしてだろうな。
「プロデューサー....うっ...うあっ...うわあああぁぁぁああ...」
響の声が胸にズキズキ刺さる。
なんで言えなかった、いややっと言えて良かった、後者の方が強く感じれる。
その晩、責任持って響を自宅まで送り、オレも一度事務所に寄ってから帰宅した。
ふと肩の力を抜いた時、少し気持ちが楽になった。
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