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どうするべきかは解らないけど、私はそんな事より、宿題を進めなきゃいけない。 さぁ、楸、集中よ、集中! …無理。何か武瑠くんが私に超絶熱視線を送って来るっ! やめて、見ないで!集中出来ないよっ! 何か手がお爺ちゃんみたいに、プルプル震えるんだけど…。 「…楸、どないしたん?手、震えとる…」 「え?そ、そうかなぁ?」 気付かなかった振りをしてみたけど、不自然過ぎるよね。声も裏返っちゃったし…。 「武瑠くんが見つめて来るから集中出来ないのぉ~」 「!?」 わ、私じゃない! 今の言ったの、完奈くん! 私の真似したつもりなのか、裏声を使って言った。 その通りだけど、勝手に言わないでー。 何…?完奈くんは読心術でも使えるの? 「楸…、そうなん?」 「え、そ、そんな事無……」 「ただいまぁー!」 一先ず否定して、どう言い訳をしようか考えてると、丁度良いタイミングで、お兄ちゃん夫妻とギンくんが帰って来た。 お兄ちゃんありがとう! 「武瑠さまぁー!」 「…おかえり。」 ギンくんは帰って来るなり武瑠くんに一直線。そして甘えて抱き付く。 武瑠くんはそんなギンくんをあやす様に優しく頭を撫でている。 ギンくんは、信じられないけど、幻と言われている種族、ドラゴンの一族。 とても珍しい、長い銀の髪と、金の目を持った、十歳の少年。 珍種狩りと呼ばれる、珍しい人種を捕らえて裏で売り捌いて居る人達に親兄弟を殺され、ギンくんもその人達の手に掛かりそうになっていた所を、武瑠くんに助けられた。 それ以来、ギンくんも一緒に暮らす様になったけど、ギンくんは武瑠くんに凄いべったり。 まぁ、ギンくんにとって武瑠くんは命の恩人だし、お兄ちゃんみたいな感じで見てるんだと思う。 …けど、何故か私は凄く警戒されてる。 理由はきっと、私が居ると、武瑠くんがあまりギンくんと遊んであげなくなるから…かな。 「すぐに夕飯作るから、早く宿題済ませて着替えてね。」 義姉さんが買って来た食材をキッチンまで運びながら私達にそう声を掛けると、私達は三人声を揃えて返事をした。 そうだ!武瑠くんがギンくんの相手をしてる今がチャンス! 宿題をしよう。早く終わらせちゃおう。また熱視線を受ける前に! 今日は夕飯何かな?楽しみだな。 そんな事を考えながら、私はやっと宿題に手をつけた。 此処に至るまで長かったわ…。
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