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でも、武瑠くんは色々と話し掛けられてるのに全力で無視。 固く口を噤[つぐ]んで俯いて、誰がお前等と喋るかと言う様なオーラを放ってる。けど…。 気付かないのね、誰一人…。 騒がし過ぎて、彼が何て声を掛けられてるかまでは解らないなぁ。 いや、そんな事より、武瑠くんを助けないと! …ちょっと怖いけど。 何がって、武瑠くんに声を掛けた時の周りの人達の反応が。 でも、そんな事も言ってられない。 走った所為で乱れた呼吸を整えると、私は人集りの方に足を進め、其処の二、三歩後ろから少し張った声を出した。 「武瑠くん!」 私の声に気付いた武瑠くんがこっちを向く。それと同時に周りの人達も私の方を向く。 貴方達はこっち見ないで……。 武瑠くんが周りの人を無理矢理押し退けて私の方に向かって来て、すぐ目の前で立ち止まった。 武瑠くんが目の前に居るってだけで顔が熱くなっちゃう…。 幼馴染みで、もう10年以上の付き合いになるのに…慣れないなぁ。未だに。 あ、そんな事より…。 「ごめんね、待たせちゃって…」 軽く頭を下げて謝ると武瑠くんは何故か膨れっ面で、ブンブンと首を横に振った。 …あれ?怒ってる……よね? 待たせ過ぎたかと反省する間もなく、武瑠くんが突然私の腕を掴んで早足で歩き出した。 「ちょ…ちょっと、武瑠くん?」 私が声を掛けても武瑠くんは何も言わない。 後ろからの突き刺さる様な視線は…もう気にしないでおこう。 武瑠くんは止まらないでズカズカと歩き続ける。 私も引き摺られそうになりながら、何とかそれに着いて行く。 あのタイミングで一体何に対して腹を立てたのかな…。 やっぱり待たせ過ぎ? 「武瑠くん。」 もう一度呼んでみた。また反応しないのかな…。 …と、思ってたけど、此処でやっと武瑠くんが足を止めた。 もうちょっと声を掛けてみよう。 「…何か、怒ってる?」 聞いてみると武瑠くんは私の方を振り返って、首を横に振った。 「…知らん人に、笑顔とか…見られんの、嫌やし…。」 口籠もりながらそう答える武瑠くんは凄く恥ずかしそう。 肌が白い…と言うか、青白いから赤面しているのがすぐに解る。 本人は限界まで俯いてその赤面した顔を必死に隠そうとしてるみたいだけど…。 …でも、武瑠くん、それって何と言うか……。 「女の子みたいな理由ね。」
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