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私のお兄ちゃんが結婚する少し前…七年程前かな。両親を亡くして…。
お兄ちゃんの奥さん、つまり義姉さんが武瑠くんのお母さんの妹で、一緒に住めば良いと言ってくれたので、家も何もかも売り払ってそこにお邪魔させてもらう事になった。
だから、知ってる。武瑠くんの事なら結構何でも。
「……ん。」
「ん?」
ボーッとしてたら武瑠くんが声を掛けて来た。うん、これ、武瑠くん語で、「ねぇ」とか「あの」とかそう言う意味。
私が顔を上げると武瑠くんがパフェを掬ったスプーンをこっちに向けている。
…え、えっと…これを、私に食べろと?
武瑠くんは満面の笑みを浮かべながら食べろと催促して来る。
恥ずかしいからあんまりしたく…いや、食べないとこれは終わらないか…。
私は軽く身を乗り出して、…恥ずかしいから目を閉じて、口を開けた。
口の中がひんやりと冷たい。アイスの部分かな。
私は頃合いを見計らって口を閉じる。
するとスプーンが口から引き抜かれた。
私はゆっくりと目を開いて口の中の物を軽く噛む。
「美味い?」
「うん。」
返事をすると武瑠くんは満足そうに微笑み、再びパフェを頬張る。
…私がボーッとしてる間に、武瑠くんはだいぶ食べ進めていた。もうあと半分ぐらい。早いなぁ…。
私は無理だわ。見てるだけで虫歯になりそう。
でも、クリームソーダは全然減ってない。最後かな?
まぁ、何も言わずに武瑠くんの好きな様に食べさせてあげよう。
クリームソーダは後で美味そうに頂いてました。
アイスにソーダをスプーンで掛けて、味が染み込んだ所を…。
いつもこんな食べ方。…いや、飲み方?…うん。
おぼんと食器を返却して私達は店を出た。
もうだいぶ日が傾いている。
長居し過ぎちゃったかなぁ…。
「帰ろか。」
「うん。」
武瑠くんはまた私の手を握って、家に向かって歩き出す。
私も武瑠くんの隣に着いて行く。
会話が無いのも淋しいので、あまり続かないけど、武瑠くんに話し掛けてみる。
「今日は嬉しい事いっぱいの一日で良かったね。」
「…うん。」
柔らかい笑みを浮かべて頷く武瑠くん。
友達が出来たのが一番大きかったな。
共通のモノを好きな友達だから、武瑠くんはとても嬉しいと思う。
「学校行く楽しみ、出来た。」
「もっと楽しみと友達増えると良いね。」
武瑠くんは深く頷くと、私の手を握り直した。
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