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武瑠くん…外見は凄く魅力的だけど、人見知りが激しいし、無口な上に声が小さいし、表情変化が乏しくて、ちょっと短気。
だから意外と絡みにくくて、友達が出来ないんだと思う。
でも、私がとやかく言った所でどうにかなる様な事じゃ無いから、そっとしている。
家のすぐ近くまで来ました。
私達の家は変わった場所に有ります。
町外れ…からもっと人里離れた人が滅多に足を踏み入れない谷。
そこにひっそりと白い縦長のドームに似た形の建物が有る。
そこが私達の家。
勿論近所に家なんて無い。
扉に近付くとそれが自動で開く。
「ただいまぁ」
「おかえりぃ」
玄関で靴を脱ぐ。
そしてすぐ目の前の大広間に大きなテーブルが一つと、椅子が遠感覚に七つ並んでいる。
その椅子の一つに、武瑠くんの弟・完奈[かんな]くんが漫画を読みながら出迎えて…って、これは出迎えとは言わないか。
完奈くんは私達と一歳違いで、武瑠くんと同じ男子校に通う中等部の三年生。
完奈くんもまた、女の子にキャーキャー言われそうな顔をしている。
美形と言うよりは、可愛い系…かな。
武瑠くんとはまた違う、光に当たると茶色く見える髪と、黒色の、二重でぱっちりとした大きな目。
目はちょっとつり目かな。
髪は…セミロングとまではいかないけど、少し長めで何とも言えない癖の有る髪型と八重歯が特徴。
…そして、何とオタク。
本人は自分を「フダンシ」とか言ってるけど…。
私にはそれがどういう意味か解らない。
「今日も熱いねぇ、お二人さん」
完奈くんがニヤニヤと怪しい笑みを浮かべながら言って来る。
…そうだ。まだ手を繋いだままだ。
靴脱ぐ時に一回離したけど、その後またすぐに…無意識のうちに繋いじゃってた。
私が手を離そうとした瞬間、武瑠くんが突然私を後ろから抱き締め出した。
な、何?いきなり何?
「良ぇやろ。羨ましいか?」
私の後ろから武瑠くんの声。
しかもかなり自慢気。
武瑠くん、自慢しないの!
完奈くんは長い溜息を吐いて、
「ハイハイ。ごちそーさん、ごちそーさん。」
と言って手をプラプラと振った。
その後に小声で、「リアジュウバクハツシロ」と何か呪文の様な事を言っていた。
どう言う意味なんだろう?
武瑠くんが私を離すと、私は完奈くんと向かい合う席の椅子に座る。その隣に武瑠くん。わざわざこっちに椅子を近付けて来た。
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