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「ところで完奈くん。宿題終わったの?」
「ぜーんぜん。手ェつけてすらないよ」
何故か満面の笑みを浮かべる完奈くん。
「いや、やろうよ…」
「だって俺今、漫画読んでんだも~ん」
流石オタク…。宿題より漫画の方が大事なのね…。
いや、そうじゃ無くて…!
「漫画は後で読んだら?」
「もうちょっとで読み終わるしそれからやるよ。」
随分と余裕ね…。本当に大丈夫なのかな?
でも、これ以上何を言っても無駄な気がして来た…。
本人が後でやるって言ってるし、その言葉を信じよう…。
とりあえず私は自分の宿題をしよう。鞄から教科書とノートと筆箱を取り出して広げた。
隣に居る武瑠くんがそれを覗き込んで来る。
「武瑠くんも宿題しないの?」
「宿題無い」
「良いなああぁー」
羨ましい。凄く羨ましい…!
武瑠様、私とかわって下さい!
武瑠くんはさっきの私の声にまだ驚いてるみたいで硬直している。ごめんなさい…。
勉強自体は好きでも嫌いでもない。
けど、数学だけは駄目。解らない。
そして、今日は数学だけ宿題がたんまり…。もうヤだ…。
溜息を吐く私の背中を武瑠くんが優しく撫でてくれる。
「解らんかったら、教えるし…」
武瑠くんは神様なの…?
嬉し過ぎて思わず涙ぐんでしまった。
当然武瑠くんがあたふたする。
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫。嬉し過ぎてつい…。」
涙を拭いながら答え、そしてにっこりと笑みを浮かべた。
あ、あれ?何か体に何かがのし掛かって来た様な…?
目を開けると……。…また武瑠くんに抱き付かれてるっ!
「武瑠くん!?」
「楸可愛い…」
ちょっと武瑠くん、完奈くんも居るのに!
離そうとしても、武瑠の力にかなわない…。
このほっそい体の何処からこんな力を出してるの…?
実は、か弱い振りしてるだけとか言わないでよ?
「武瑠くん、宿題宿題!」
「…あ、…うん。」
武瑠くんの背中を何回か叩くと、武瑠くんはハッとして、漸く私を離してくれた。
もう、恥ずかし過ぎて呼吸困難に陥りそうだったわ…。
はぁ、顔熱い。今日でこれ何回目?
うわぁ…。完奈くんがすっごい冷たい目で見てる…!
ごめんね完奈くん…。
…って、謝ってどうなるんだろ?私の所為じゃないよね…。
でも武瑠くんも悪気が有るわけじゃ無いと思うし…。
こんな時、どうしたら良いの?
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