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「…突然だけどいい?」
「え?別にいいけど。」
鳴海は席につく。椅子がきぃと、静かに音をたてた。
「わたしね、自分の名前が変だなって思って、お父さんに由来を聞いてみたの。そしたら、答えてくれなくて…。」
名前…。そんなバカな。佐藤鳴海は、鳴海という名前は、すごいんだと、いろんな人に言っていたくらいだったのに。
「佐藤…お前、何があった…?」
「別に何も。ただその…価値観みたいなのが吹っ飛んで…消えた」
消えたじゃねーよ。なにが消えただ。どんな名前だって欲しがってるやつがいるってのによ。
あれ?オレ誰のこと言ってんだ?
「おい…。鳴海ってのは、他の誰かが持ってるのか?お前は、いや、その名前のお前は、世界に、宇宙に、この世に1人しかいねえだろう」
「それって…」
そこまで言って、鳴海は言葉を止めた。まるで次の言葉を、好未に言って欲しかったかのように…。
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