名前なんてくそくらえ

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好未は休日が好きだ。 学校もそこそこ楽しいが、やはり休みの日はのんびり出来る。 羽根伸ばしにはちょうどいい。 「今日はぶらぶらと川沿いに歩くとするか!」 好未は休日の過ごし方を、毎回変えている。家で一日中ゲームをしている時もあれば、友達とアメ横に買い物へ行ったりと、様々だった。 今日はぶらぶらと川沿いを歩くことにしているようだ。 「そんでね、名前が太郎っていうの!山田太郎なんて名前いたのね!」 「え~!なにそれ!ちょーウケるんだけどぉ~」 わずかに背の高い女子高生たちの会話が耳に入ってきた。 好未は足取りを少し遅くして、真上の空を仰いだ。 「そういやオレ、前に親父にキツくあたったことあったっけ…」 時は2年前。 好未は自分の名前が非常に嫌いだった。中学3年で、受験勉強に追われ、心に余裕が無かった時期だ。 好未という字は、漢字も読みも女の子っぽかった。友達にからかわれて、嫌な気分だった。 「なあ…オレの名前の由来ってなんだ?なんでこんな名前なんだ…?」 それはもう聞いているというよりは、脅している。に、近かった。 「父さんはぁ大阪のもんやろ? 父さんは小さいころから、お好み焼きがえらい好きやねん。そんで子供には好ゆう文字入れたかってん。」 とんでもない! そう思ったと同時に、 「ふざけんな!!人がどれだけ苦労してるかも知らずに…!もういいこんな名前いらねぇ!!」 「お…おおい。好未!待ってくれ!これはちょっとした冗談で…」 その時の彼には、冗談を冗談だと笑って受け止められるだけの、心の余裕すら無かった。
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