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「おれは好未。柿崎好未」
そう答えた。それだけで良さそうだったが、続けて聞き返す。
「君の名前は何て言うの?」
「無い。」
その子の言葉に一瞬耳を疑った。
名前が無い?そんなことがあるのだろうか。
名前を付けないというのは、法律的にも許されているとも思えない。それにどんなにめんどくさかったとしても、適当に名前は作れるだろう…。
「わ…、忘れちゃったのかな?」
「ううん。無いの」
そんなバカな。親が本当に名前を付けなかったってことか?なるべくその子に聞こえないように呟いた。
「名前はね、あるけどないの。」
なんだ…?言い分が変わったぞ
まるであるような口調で…
「ナマエガナイがナマエなの」
えぇ…。何を言ってんだこの子は…。全く…あきれたもんだ。
「よくわかんないけど、ないなまえって書いて『のう』ってのがあるよー」
なんだちゃんとあるんじゃないか…と驚きを収めて言った。
しかし…なんだかちがう気がしていたのも事実だった。
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