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「ないなまえって…無名と書いてのうって読むんじゃねえか…」
名前が無いのはひとまず信じようと、心に言い聞かせた。
じゃあ何故そんな名前なのか…
ー話が噛み合っていないのだがー
すると、少女が髪をかき分けて、
好未にむかって言うのだ。
「わたし、なまえがないから生きる意味ないの?」
あまりにも単刀を刺してくるもんで、たじたじだった。
でも、好未はちからいっぱい、同じ目の高さから言った。
「そんなことはない!名前が無くても、名前が変でも、胸を張って生きてれば、名前なんかよりももっと良いものが見つかるから!」
その言葉はなんだか、自分にすら言い聞かせているようだった。
「じゃあなんであのひとたちはわたしにそう言うの?」
「あの人?」
顔をぽかんとさせていたら、目の前に何かが落ちて来た。何かは、爆風を巻き起こして落ちて来た。
「その子を私にひきわたしてくれんかね?」
何やらいかにも執事向きな声や格好をした男が、落下地点からスタスタと歩いてくる。
「よくわかんないけど、ヤバイ雰囲気だよな…」
「その子が必要なのだ。なんなら取引でも良いのですぞ?」
不思議な男の言葉を受け入れる気など無かった。
「やだ」
あからさまにバカにした表情で、
男の取引を断った。
「では仕方ありません。力ずくといきましょう。」
そう言うとスーツの中から拳銃を取り出した。そして何発か発砲した。
パァンパパァン!
銃声が鳴り響く。周りの人がざわめき始めた。間一髪、よけたつもりだったが、かわしきれていなかった。
ひだりの太腿損傷。
「あつつ…!ったく…!なんだってんだよ!」
「取引に応じないからです。おとなしく、素直に渡せば良いのです。今ならまだ有効ですよ。治療代も持ちます。」
誰が!渡してやるもんか!
しかし、この体じゃあいつを殴ってやることすらできねえ。
と、心の中で葛藤する。
そこに、クラスで1番喧嘩の強そうなやつ、城島直輝が通りかかったではないか。
「城島ァ!!」
力いっぱい叫んで呼んだ。
城島が気づいたらしく、こっちへすっ飛んで来た。
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