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城島は、一瞬で状況を判断していたらしい。そこに好未が首で男を指す。分かった!と言わんばかりに、男を殴った。男の体勢が大きく崩れた所を、城島がもう一発!
何発も何発も殴る蹴る。
「トドメだ!柿崎ィ!!」
甲高く、虚空にその声と、力強く握られた拳が男を吹き飛ばす音が同時に響く。
「サンキューな。城島。」
「いいんだよ。久しぶりに楽しかったぜ。」
城島は強くていい奴なのだ。
平凡なオレとはちがう。と、ちょっとひがんでみせた。
警察が駆けつけ、好未と無名ーのうのことを指すーは署まで行くことになった。好未は太腿の怪我を治してからだそうだ。
一週間たった。
その日の無名との会話はなるべくかいつまんで父に話した。
「うーん。とても立派な行動を、
お前はしたと思うぞ。」
「父さん…オレ好未って名前の、本当の由来が知りてぇ!あの子を見て思ったんだ。あの子の運命とか、過去とか、この先とか、気持ちだとか、何にも知らねえけど…
名前が無いって…どんなに辛ぇことだよ…!」
その言葉は、好未が初めて自分の名前への自信を持ったことが現れていた。
「好きな未来と書く!分かるか」
好未にはよくわからなかった。
「父さんな、昔何もさせてくれへん親元で育ってて、いっぺん引き取られたんやで。そこで初めて自由を知ったんや。せやから、自分の子供には、好きな未来を選ばしたろう思てたんや。」
そんな風に思ってくれているとは全く思っていなかった。
嬉しさを隠し、2階の自分の部屋へと戻っていった。
平凡でいいんだ。ただ、名前にだけは自信を持とう。世界でたった一つの、大切な。
オレだけの名前なんだから。
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