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俺は本屋で働いている。店は古い小さな一軒家に見える。窓枠は木だし、ドアは自動では開かへん。
そんな店の従業員は、俺と店長の横山さんだけだ。
店内は狭くない。むしろ二人で管理するには広いくらいや。
客は平均すれば2人から3人。一日中誰も来ない時もある。
しかも普通の客は来ない。何かしら事情を抱えた人が来る店なのだ。
働いて3ヶ月。いまだに慣れないこともあるけど。
横山さんは俺を怒ったことはない。優しさの底が見えない人なのだ。
「すいません……本を売りたいんですが」
俺は一番ドアに近い本棚を整理していると一人の男性が現れた。
「どうぞ、椅子にお掛けください」
俺は手だけで促すとその人は小さく一礼して座った。
俺は本棚から離れて、男性の目の前に座った。
小さな机をはさんだその向こうには、伏し目がちの客。歳は20代半ばといったところか。
「お名前は?」
俺は机の上にあるノートを開きながら聞いた。
「安田……安田章大です」
彼の名前をすぐに管理表に書く。
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