episodeⅠ

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「ここのところ、盗賊も増えている。」 『盗賊・・・シテンリアですか。』 「よくしってるね。最近このシテンリアっていう団体盗賊が暴れまわっている。」 盗賊軍団、シテンリア。 彼らは名の通ったお尋ね者の吸血鬼集団で、 狙った獲物は逃がさないという。 その中で最も危険とされている人物は、 シテンリアのリーダー、シャルロットだ。 彼は別名、睡蓮と呼ばれるほど華麗らしい。 実際に見たことがないのでなんともいえないが。 どこが怖いのかというと、 下手をすれば零よりも残酷で、 獲物をてにいれるためには手段を選ばないという事だ。 そして、一番零が怖がっている彼の本性。 それは気に入った女を連れていってしまう事。 以前、ティーナという一番大きい国の姫が、 シャルロットに誘拐された事件があった。 ティーナの者は死に物狂いで助けようとして、ついに彼らは奴等のアジトを見つけたのだが。 すでにもぬけの殻で、ベッドには血だらけで倒れている、ティーナの姫がいたらしい。 彼女はすでに息絶えていた。 おそらく、シテンリアの奴等に血を吸い尽くされてしまったのだろう。 零はそれが、怖かった。 外に連れていってしまえば、杏は絶対にシテンリアの餌食になってしまう。 ましてや彼女は人間。奴等が狙わないはずがない。 殺されるなんてもってのほかだ。 「まだ杏はお子様だからね。」 できるだけ、悟られないように笑いながら話す。 彼女が不安にならないように。 彼女が安心して暮らせるように。 『もう!そればっかり!』 「ほら、この話はおしまい。俺は仕事があるから、杏は和也とあそんでおいで?」 零はそういうや否や、手をパンパンと二回鳴らし、召し使いの名前を呼んだ。 幸村「和也、和也。ちょっと杏の相手をしてやって。」 「かしこまりました王子様!へへっ」 和也と呼ばれた陽気な少年は、にこっと笑いながら部屋に入ってきた。 少し癖のあるパーマがかった髪に、 澄んだ黒みのかかった瞳。 純粋な彼だが、王国に反するものはすべて排除する。 何と言う性格だろうか。 彼の種族は悪魔で、それを象徴する紫の尻尾が ついている。 杏は以前それを引っ張ってすごい怒られた。 「さ、お嬢様。遊ぼうぜ!」 和也と杏は身分の違いを感じさせないくらいの仲だ。 いわゆる大親友。 共に笑い、共に泣き、共に喜び、共に怒り。 和也に手を引かれ、杏はしぶしぶ中庭へと 足を運んだ。
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