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産まれてこのかた、十三年。一度も外に出たことがない。本の様々な知識は何のためにあるのか、また、何のために学んでいるのか。分からなくなってきた。暇潰しのためが妥当な解答だろう。 「……母は何も知らない。お前がどこにいるのか、どうしているのか。恨むなら父か俺にしてくれ。頼む」 記憶のなかにいる兄はいつも凛々しい人だった。弱みを見せることのない方だった。しかし最後に会ったときだけは小さく弱々しく見えた。 少女は目を開ける。 「………そういや、私。あの時何て答えたんだった?何か凄く驚いた顔をしていたのは覚えてるけど」 私は家に囚われている。古くから伝わる一族の伝承。数百年に一人産まれるか否かの災厄らしい。 あれから家族に会っていない。別に寂しいわけでもない。でもどこか…… その時。 「………ふう。どうにか追っ手を巻けた。此処なら大丈夫だろう」 少女の目の前に現れたのは銀髪の青年。一目で日本人では無いことがわかる。 青年は壁にもたれ掛かる。 「……………だれだ?」 そこで青年は少女に気づいたようだ。 しばらく沈黙が続いた。
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