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少女は微笑んだ。見た目にそぐわぬ大人びた表情で。
「どちら様か存じませんがここから早う出た方がよろしいかと思います」
青年は驚いた。目の前の光景を。
「あと一時間くらいは大丈夫だと思いますが早いにこしたことは有りません」
少女は続けた。
青年は唾を飲み込み、そして目を細めた。
「………酷い光景だな」
青年は檻の中にいる少女の姿を見ていう。少女の服装は華やかであったが、少女の足元は石の地面。そこにあるのは数多くの本が並んだ本棚とベッドが一つだけ。
「お前の親は一体何を考えてるのだ。娘をこんな所へ閉じ込めて」
少女はあいかわらずの顔で微笑む。
「この事に関しては致し方有りません。一族に代々伝わる言い伝えが絡んでいる事ですので。それより侵入者さん」
少女は笑みを引っ込めた。
「話も対外にしてさっさと此処からお出になさい。貴方がここにいるのは身に危険が及びますよ」
「……ああ、そうか。噂に聞いた呪いの一族の娘ってお前の事だったのか」
少女は眉を僅かに動かす。
青年は続ける。
「十数年間、こんなところにいたら気が滅入るだろうに」
「……………」
少女は何も言わない。十数年という月日は何も変わらなかった。ただ毎日この外と遮られた部屋で暮らしていただけなのだ。
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