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「よし、此処まで来れば平気だろう」 青年は足を止め、少女の手を放した。 少女は目を丸くした。 目に写るのは今までに見たことのないものだったからだ。 まず、眩しいくらいの明かり。そしてそれは太陽の輝きだと気づく。その他には溢れかえる人の数。それにともなう賑やかな笑い声に話し声。 呼吸を忘れてしまったように絶句する少女の姿に青年は吹き出す。 「……ぷっ。そうだよな。お前は初めてだものな。だが、これが普通なんだ。人はこの空の下に生きている」 青年は少女の頭を撫で回した。 「さて、初めてみる町を案内して差し上げよう。お嬢さん」 青年はそういうと少女の前に手を差し延べた。 少女は戸惑い、逡巡した果てに怖ず怖ずとその手に自分の手をのせた。
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