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少女は物珍しそうに道行く所の店に立ち寄った。 「…あれは何ですか?」 「あれは八百屋というい食べ物を売ってるところだ」 「あっちは?」 「あれは呉服屋だ。お前が着ている着物を作って売っている店だ」 そうやって街中を歩いていく。そして少女はある店の前で立ち止まった。 「………きれい」 青年は少女が目にしているものを覗きみる。 「これは簪という自分を飾り立てる為のものだ。……なんだ?こういう物を持っていないのか?女は大抵持っているものだと思っていた」 「……私は特に誰と会う事も有りませんでしたし、見たこともありませんでした」 簪を眺める姿は初めてみる年相応のものだった。 青年は片手で首を掻くと声をあげた。 「店主。こいつにこれをやってくれ」 「……えっ」 「わかりました。この蝶の簪ですね」 店主は傷がないか調べに奥へと引っ込む。 「私、お金もってないですよ」 「大丈夫大丈夫。俺が払うから」 青年は戻ってきた店主に代金を払い品物を受け取る。そして少女の頭に簪を挿した。 「おお、似合う似合う」 「………ありがとう。異人さん」 少女は笑った。生まれて初めて心からの笑みを浮かべた。 青年は目を見開いてそっぽを向く。その頬は少し赤く染まっていた。
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