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「桜木」
ピクッと揺れる肩。それが羞恥心で顔を俯かせたままの彼女なりの反応。
「いくら無意識だったとはいえ、女子の胸を揉むのは悪いことだよな。……ごめん」
俺は真面目に、率直に謝罪の言葉を述べる。どんな言葉を並べようと所詮はただの言い訳だ。
謝罪する場合は言葉少ない方が相手に反省の思いが伝わりやすい。
俺の謝罪の言葉を身動ぎひとつせず聞いていた桜木は数秒後、まだ赤みがかっている顔をゆっくりと上げ、
「……いいよ、…許す」
と言った。その声はわずかに震えていた。羞恥心が完全に消え去っていないのだろう。
桜木の許しを得た俺は安堵の息を漏らす。安心したせいだろう、気付けば俺は口を開いていた。
「良かった。桜木に嫌われずに済んで」
俺が漏らしてしまった何気ない一言に桜木は目を見開いてずいっと顔を寄せてきた。
「裕二君を嫌いになるわけないよ!だって、私は!あなたのことが……」
そこまで言った桜木は手で口元を押さえてバッと顔を俯かせる。
なんかこれ、さっきも見たなと思いながら俺は心臓の鼓動を鎮める努力をする。
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