銀咬の狼

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緊張した顔に途中まで言いかけたあのセリフ………。 告白されるかと思った。そんなはずないのに。 俺と桜木との間に気まずい雰囲気が流れる。どうしたらいいんだこの空気、誰に問うわけでもなく思っていると、 キーンコーン、カーンコン。 ナイスなタイミングでチャイムが鳴る。俺はこの時を逃すものかと立ち上がり、桜木に手を差し出す。 「桜木、HR始まるぞ」 何気なく自然な感じでそう言う。また気まずい雰囲気に戻したくない。 桜木は「…うん」と蚊の鳴くような声で言い差し出した手を取る。取った手は少し震えていたが、気付いていないふりをした。 しばらくすると担任がHRを始めた。特に連絡事項がないままHRは終わり退屈な授業に突入する。 ――――――― 授業はいつも通りのカリキュラムで進み今は昼休み。 ちょうど教室の真ん中に位置する劉の席に皆で集まり昼飯を食べる。 ちなみに美穂の席は廊下側から二列目の二番目。桜木は廊下側から一列目の一番後ろ。俺は窓際の一番後ろだ。 「劉は今日はパンの日か」 「ああ、そうだよ」 俺は自分の弁当のおかずを食べながら言う。劉の右手にはカツサンドが握られている。
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