銀咬の狼

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ヘリコプターによる上空からの映像だろう。昼下がりの市街地に自衛隊の姿が小さく写っている。 その自衛隊に相対するように存在している生物。 燃え盛る炎を連想させる赤々とした体毛、コウモリのような皮膜の翼。 サソリが持つ毒針ようなものが無数に生えた節のある長い尾。 そして三列に並ぶ鋭い牙を持つ人面のライオンのような姿をした怪物、もとい魔獣。 その姿は伝説上の生物である『マンティコア』を連想させた。 自衛隊と魔獣との距離は約二キロ。 マンティコアに酷似した魔獣は大きく翼を羽ばたかせる。 発生した風圧によってビルの窓ガラスが恐ろしいスピードで割れていく。 二キロは離れているであろう自衛隊側の戦車が吹き飛ばれさそうになる。 台風顔負けの風が吹き荒れる中、魔獣が鼻から大きく息を吸い、 吠えた。 その雄叫びはケイタイ越しでも鼓膜が破れんばかりの大音量だった。俺は無意識に画面に近づけていた顔を反射的に体を仰け反らせながら遠ざけた。 劉は反応が遅れたのが顔をしかめながら耳を塞いでいる。
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