騙りあう旧友

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 草野が言い放った言葉が、胸から離れない。一体どういうことだろう。  いや、彼女なりの冗談らしいのだが、どうも心に残って仕方が無い。  他の皆は各々盛り上がってるし、中々話を戻すことも出来なさそうだ。俺自身、そこまで執着することでもないとは思うけど、やっぱり思い出せないままなのは気持ち悪い。  でも坂井と仲良さ気に話しているのを見れば、あの男は田口であると納得するしかないのか? 一人では訊きにくいしな。  そういえば、まだ全員と話した訳ではないよな。残っているのは、隣の座敷の端っこで、二人で飲んでいる男女だけだ。  恋人なのだろうか? そう考えると二人の中に入って行き辛い。しかし、二人は仲が良さそうにしているわけでもなく、どこか神妙な顔つきだ。  なんだろう。どうも、普通じゃない雰囲気だけど。  あの二人は誰だったろう。男のほうは彫りの深い顔立ちで、右側だけ髪が長く左側だけ髪が短い。体格が良く、茶色のジャケットが良く似合っている。  女性の方はふくよかな体型で、顔立ちも丸い。髪は癖が強いのか、パーマを当てているのか判らないが巻き毛だ。黒地に水玉模様の入ったスカートを着用している。  名前が浮かばない。でも、ふくよかな彼女の方は確かに記憶に残っている。喉元まで名前が出掛かっているのだけど。
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