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「お、来たな。ええと、お前は……?」
最初に反応した男は背が高く、目が細くて鼻が大きめで、名簿らしいものを持っている。それを見て、俺は彼が赤井慎太郎だと理解した。
「憶えてるかな? 藤沢優輝だけど」
「藤沢? ああ、憶えてるぞ。体弱くて、あんまし学校来れなかったんだよな。中学でもそんなに見た記憶ないもんなあ」
「久しぶりだね、赤井君」
「俺のこと判るのか? 憶えててくれたんだな。嬉しいぜ」
赤井は本当に嬉しそうに笑ってくれた。俺も嬉しくなって、一緒に笑う。その様子を窺っていたのか、席を立った数人の同級生達に囲まれる。
「藤沢だよね? 立派になったな」
「うわ、肌白い! 羨ましいなあ」
「そこ羨ましがるところじゃなくない?」
引っ込み思案な俺の悪い部分が出て、言葉を上手く紡げずにまごついていると、赤井が助け舟を出してくれた。
「おいおい、いきなり虫みたいに群がるなよ」
「ああ、ごめんごめん」
すっかりその場の注意を自分に向けた赤井が、話しながら俺に席に着くよう目で促してくれた。俺は素直にそれに従い、座敷席に腰を下ろして一息入れる。
店主らしい人が焼き鳥や揚げ物なんかを作っているらしく、店内は食欲をそそる匂いが漂っている。
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