行方知れずの答え

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「あの人が誰か? 田口君なんじゃないのかなあ。坂井君と仲良く話しているし」  加賀谷は坂井の隣にいる男を見ながらそう答えた。予想通りの返答だ。  問題なのは、彼が本当に知らないのか、それとも知らない風に装っているかだ。正直、加賀谷は人を欺けるとは思えない。  どうやって探り出そう? 普通に訊いたって、あれが誰か判る人間には適当にはぐらかされるだけだし。 「やっぱり田口君なのか。いやあ、俺はどうしても違和感があってさ」 「違和感?」  焼き鳥を頬張りながら、加賀谷が聞き返す。その様子はいたって平常のものだ。 「うん、なんだか随分変わったような気がしてね」 「そうかな? 僕はそんなにまじまじ見てないからなあ。そんなに変わった?」 「昔とは別人みたいに大人しいし、顔つきも違うような気がするんだ」 「へえ、そうなんだ。でも、長谷川さんみたく思いっきり変わった人もいるじゃない。 数年でも、結構変わる人はいるんじゃないかな? それに、あの人が田口君じゃないんなら、あの人は誰なの? 本物の田口君はどこにいるの?」  そういえば、本当の田口は今どこにいるんだ? ここには来ていない。まさか、あの人が同窓会の替え玉ということはないだろう。  そもそも替え玉を作る理由が解らない。作ったって、すぐに偽者だと判断されるだろうに。
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