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意外だな。いや、外見だけで判断しちゃいけないよね。元々は真面目な人だったんだから。
「長谷川さんって随分変わったよね。昔とは全然違って、びっくりした」
「そうでしょ? みんな驚いちゃって面白いのよお。本当に……」
「ところで、あの人って田口君なんだよね? 変わった人が何人かいるから、判断つかなくてさ」
それを訊いた時、長谷川が一瞬目を見開いた。
「え、うん、もちろん。あたしちゃんと訊いたもん」
「へえ、話しかけたんだ?」
「一応ねえ。仲は良くないけど、クラスメイトだったんだし、挨拶がてらね!」
「そうなんだ。変な話だけど、俺は彼が田口君だと思えなくて」
「どうして?」
「顔つきが違うなって思うんだ。口調も随分穏やかだし、あの田口君だとはとても思えないんだ。
いくらなんでも、そんなに人って変わるものかな? 容姿だけでなく、性格まで」
もちろん嘘だ。話してもないし、そこまで顔をまじまじと見たことなんか無い。
「そ、そうかなあ? 私そんなに顔をちゃんと見たことないし。ていうか、数年もあれば誰だって変わるよ。性格だって大きくね!
大人っぽくなったんじゃないかな、田口君は。わ、いやあたしだってこんなに変わったじゃない? それに……」
やたらと詰まりながら言葉を吐き出し、目が泳ぎだした。焦っている。俺は確信した。彼女は事情を知っている。
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