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「美鈴!」
「一体、どういうこと?」
内田は苦々しげに表情を歪ませるが、言い逃れが出来ないと判断したのか口を重そうに開いた。
「美鈴ね、しばらく妙な手紙をもらってるのよ。いわゆるストーカーって奴。
美鈴の部屋の写真を添付して送り付けたり、いつでも見てるよとか今日は何をするんだよね、とかそういう内容の手紙が送られてきてるの。
それでさっきも美鈴が言ったけど、止めて欲しければ今日はこの格好と口調でここに来いって手紙がきてね。
内容の意味は解んないけど、つまるところ美鈴のあり得ない姿を見たいっていう変態的な欲求の手紙なのよ。
で、私達的には犯人は同窓会メンバーの誰かだと思うのよ。だから、美鈴には恥を忍んでさっきのまま頑張ってもらってたの。犯人の目星をつけるまでね。なのに……!」
ごめんね、と美鈴が呟く。まだ泣いていて、長谷川にはまだ話を訊けない。
だが、内田の話で理解した。長谷川は今まで自分とは正反対の女性を演じていたのだ。
「警察には言わなかったの?」
「もちろん言ったけど、本格的な事件にならなきゃ動きゃしないわよ。周囲のパトロールを強化するとか、動いてくれてもその程度だったわ」
成る程、頼みの警察がそれだから、藁にもすがる気持ちであの軽そうな女性を演じていたわけか。
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