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成る程、容姿だけでなく、口調まで指定する辺り、確かに犯人はその日身近にいる誰かである可能性が高いな。
「犯人は同窓会のメンバー、か。目星はついたの?」
「ついてたら、とっくにこんな格好もあの尻軽そうな女の真似も止めさせてるわよ」
この二人はこの二人で、事情があるのか。
「凄いね、優輝君。私があんな演技してるって気付くなんて」
「いや、俺は君が演技をしてるとは気付いて無かったよ」
「え? だって何を隠してるのって訊いてきたよね?」
「あの田口らしい人のことをなにか知ってると思って言ったんだ」
俺は彼女達に、今までの経緯を伝えた。納得したのか、長谷川は少し微笑む。
「じゃあ、私の早とちりだったんだ。駄目だね私ったら」
「いや、ただでさえ無理をしていたんだから、誰かに詰め寄られたらそう思うよ。ごめんね、事情を知らなかったとはいえ、あんな訊き方して」
「あんたらねえ、勘違いで話し進めてたわけ? 藤沢! 聞いたからにはあんたにも犯人探し手伝ってもらうから」
「わかってる」
別件の問題が増えたが、一応味方が出来た。この二人もあの男と繋がりはないらしい。
「ほら、寒いから戻るよ」
俺達が店内に戻ろうとした時だ。あっ、と長谷川がなにか思い出したように立ち止まる。
「優輝君。あの人のことだけど、全然情報が無いわけじゃないよ。私、聞いたの」
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