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「なにを聞いたの?」
「美鈴? なにか知ってるの?」
内田が俺の前に出て、声まで被らせた。余程俺を長谷川に近寄らせたくないのか。
「あのね、今日、私達早くに来たんだけど、坂井君が私達の後に来たの。赤井君が確認のためとかで、名簿を持ってチェックを入れてたのは知ってるよね。
その時に、小声でなにか話していたの。その時聞き耳を立てちゃってね、その内容を少し聞いたんだ。
今日を乗り切れば終わりだ。あいつを田口に見せかけろ。気付かれないか。会話に混じらせるな。あいつはいつ来るんだ。もういる。
断片的だけど、確かそんなこと言ってたの」
やっと得られた情報。やはりあの二人は手を組んでいたのか。
今日を乗り切れば終わり、とはどういうことだろう。そもそも、なぜあの二人が組んでいるんだ? さして仲が良い訳でもなかったはずなのに。
「なんか、変な話ね。あいつらもなんか妙なことに巻き込まれているのかしら? いい気味ね」
「あの田口君、偽者なのかな。最初は悪戯でも考えてるのかと思って、気にしてなかったんだけど。
優輝君の話を聞いてからだと、変な話だね」
「うん、まだ情報が足りないな」
解るのは、会話の流れとして彼らが意地でも明るみに出したくない話だということだ。
今まで確認が取れたのが五人。あと残りが、俺とあの男を除いて五人か。
その内赤井と坂井が組んでいるのは解るから、あと確認を取れるのは渡辺と犬川、草野の三人か。
だが、確認をとった全員が真実を語っているとは限らない。
しかし、もし今まで話した人物の中に赤井達と繋がっている人物がいれば、彼を探っている俺に対して、なにかしらの反応を見せるだろう。
騙(かた)っているのは、誰だ?
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