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店内に戻ると、赤井に犬川、加賀谷に加えて菊地に鍋島が固まって盛り上がっていた。内田はそそくさとその中に入っていき、先程の気性とは裏腹の、大人しめの口ぶりで赤井達の中に溶け込む。
「ごめんね、驚いたでしょ。彩ちゃん、一部の人にしか本性見せないから」
「そ、そう」
成る程。本来、長谷川と内田は正反対に近い性質の違いがあるようだな。
長谷川もその中に加わると、また口調を変えた演技を始めた。長谷川も、内田という女性を知っているからこそ、こんな演技が出来るのかもしれない。
しかし、これから残りの数人にどう確かめようか。
まずは、離れて一人飲んでいる渡辺に話を聞くのが先決か?
正直気が進まない。だが、なにか新しい話を聞ける可能性がないとも言い切れない。
それに、カウンター席には坂井がいる。あの男との会話を盗み聞き出来るかもしれない。
俺は渡辺の横に座る。坂井が横目で俺を見たが、目が合うとすぐに逸らされた。
「なんだ」
「特に理由はないけど」
「ふん」
適当な返事をしてから、渡辺はビールを飲み干した。
「渡辺君って、坂井君達とは話さないの?」
「急になんだ」
「いや、仲良かったのに、話してるところ見てなかったから気になっただけだよ」
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