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「あの人を隠しているのは、貴方にある問題があるからなの。それはとても繊細な問題で、簡単な話じゃないのよ。
本当なら、隠していたいことだった。でも、もう時間がなくなってきててね。だから私達でこの問題を解決しようと思って、今日に懸けることにした」
「俺に、問題?」
どういうことだ。俺に問題があるのに、俺自身が知らないことなのか?
それに、犬川はそんなに知らないとか言っていた。つまり、全員あることを隠していることは間違いないにしても、その内容の把握度は人により異なるってことなのだろう。
その差は一体なんなんだ。
時間がないってどういうことだ? 事態を見るに渡辺が焦って計画を早めたようだけど、それも関係あるのだろうか。
「アタシもよく知らないわ。でも、そうね。これは説明に時間がかかるわ。今と、過去の両方を語らないといけないから」
「今と過去?」
「そう。流れとしては、過去から、いいえ、現在から遡っていきましょう」
「ええと、いいかい。多分、物凄く動揺するし、理解するのに時間が掛かると思う。だから、気をしっかり持ってね」
加賀谷が不安そうにそう忠告してきた。そう言われると、少し怖く感じる。
「じゃあ、訊いていくわね。藤沢君、最近妙な感覚になったりしない? 見覚えないのにあるような気がしたり、変な感覚を覚えたりとか」
「既視感なら今もあるよ。特に、彼に対して」
ずっと見覚えがあるように感じているが、全く思い出せない。田口ではないし、一体誰だったか。その感覚ならここに来てずっとある。
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