濁った真実

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 俺が知らない、自分自身の問題。一体それはなんだというのか。 「まずね、小学校の頃を思い出してもらわないと。話はそこからね」 「小学校の頃か。言われてみると、あまり思い出せないんだよな」 「入学した当初なんて覚えてる?」 「いや、ほとんどーー覚えてないかな」  さすがに記憶には残っていない。うっすらと一場面らしいものも浮かぶのだが、それが入学式である確信が持てない。  そもそも、その辺りのことなんて何一つ憶えていないな。小学校低学年の頃のことは、忘却の彼方に消えてしまった。  待て、俺も思い出す努力をするんだ。皆が知っているのに、俺が自分自身のことについて解らない訳がないじゃないか。  問題があると言った。問題とは一体なんだ。このことが解れば、なにもかも解決するはずだ。  記憶があやふやになっていることは関係しているに違いない。なら、俺の記憶を辿れば真実に辿り着けるはずだ。 「じゃあ、小学校三年から四年の頃はどうかな」 「完全には思い出せないけど、皆と遊んだ記憶はあるよ」  その頃は、特に病状が芳しくなかった。酷い時期だったのは、脳にこびり付くだけ憶えている。時折行くことが出来る学校が、とても楽しかったっけ。  記憶を辿ると、中々思うようには思い出せないものだ。なにかをしていたはずなのに、なにをしていたかを思い出せない。  まだこの頃には問題ない。この後になにかあったのだろう。
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