濁った真実

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 もう、飽きるだけ念を押されている気がするが。とにかく、もう俺には前しか見ることができない。  彼の問い掛けに、俺は深く頷いた。 「じゃあ、話すよ。後悔なんてしないでほしい。君が望んだことなんだから。 まずね、はっきり言わせてもらうと、君は藤沢優輝じゃない」 「え?」  何を言い出すかと思えば、俺が藤沢優輝じゃないだって? 冗談にしてもつまらない。 「信じられない、といった顔じゃないか。でも、言ったはずだよ。僕達は真実を語るってね。 君の目の前にいる僕は、君が眠ってる間に生まれたんだ。君がいない間は、主導権を握らせてもらったよ」 「なに、言ってるんだ? 主導権って?」 「だからね、君の代わりに、僕が表に出ていたんだ。でも、君が起きたからね。もう必要ないよね」  理解が追い付かない。こいつは賢しい顔で、涼しく何事か言葉を吐いている。でも、俺にはそれが理解できない。  意識が薄らぐような気分に陥った瞬間、目の前の彼に肩を掴まれた。 「逃げるなよ。君はいつもそうだった。なにか嫌なこと、理解したくないことがあると、必ずそうやって僕達に押し付けるんだ」 「逃げるなんて!」 「事実じゃないか。君はいつもそうだよ。指摘すると怒って、塞ぎこんで」  なんなんだ、この男は。人のことをさも解っているように。大体、嫌なことをどうして他人に押し付けられるというんだ。
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