濁った真実

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「またそうやって、理不尽を受け入れない。まあ、受け入れる人の方が少ないのかな。 ああ、話が逸れたけど、君がどうしてこんなことになったのか、だったよね」  口調に苛立ち、動作一つにも腹が立つ。この男は受け付けられない人種だ。 「小学校――六年生になった頃だね。修学旅行のあった日だ。それが君の運命を変えてしまった、分岐点だったんだろうね。 あの日は雨だった。山道をバスが進んでいた時だよ。土砂崩れに巻き込まれたんだ。 酷いもんだったよ。横から突然、尋常じゃない衝撃があったんだから。それが来たと思った次の瞬間には、窓を突き破って大量の土砂がバスの中になだれ混んできたんだ」  嫌な断片を思い浮かべた。それは、見る限りの濃い茶色。いや、濡れた石の色もあった。そして、肌色に――赤色。 「嘘だ。そんなことあり得ない」 「あり得たから、君はここにいるし、僕達がいるんだよ。解るかな。解らないよね。 ああ、自己紹介をしていなかった。僕は藤沢優輝。君が今、名乗っている名前は元々僕のものだ。 なら、君の名前はなんだろう? 赤井慎太郎? 犬川麗香? 長谷川美鈴? 坂井賢二? どれでもないよ。どれでもないけど、皆君の中にいるんだな。なんだい、その顔は。随分間抜けな面じゃあないか。笑いなよ。笑えない? じゃあ、どんな顔がいいの?」
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