濁った真実

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 ざわざわと木の葉が風でさざめくように、俺を囲んだ彼らが相談しあう。  俺だけだ。俺だけが置いていかれている。どういうことだ。どうして俺だけ理解出来ない? どうして皆だけ理解して、俺だけ解らないんだよ。  俺が愚鈍過ぎる性格だからなのか? それとも誰にも理解出来ない内容の話題を振られているからなのか。  完全に俺の問題を把握出来ているらしい、あの男が統率者のような存在であるのは理解した。  次点で赤井と坂井、後は残りの全員といった順位だろう。  そういえば、俺の問題とやらを把握している奴は一部に限るらしい。 「どうして俺の問題とやらには、全員理解の幅にズレがあるんだ?」 「なんでって、決まってるっしょ? 俺達には表に出れる優先順位があるんだって」 「それが知っている範囲のズレに繋がるの? なぜ?」 「表に出る時間が長いほど、記憶の量も豊富だからさ。解らないかもしれないな。 解りやすく言うなら、僕達は記憶の破片なんだよ。それが大きい程存在が大きい。だから僕は表によく出ているのさ」  記憶の破片。誰の? 俺の? なら、彼ら一人一人には、細分化された俺の記憶があるっているのか? 「やあ、やっと解ってきたみたいだね! そう、君には僕達という記憶以外の部分しか残っていない。 だから思うように過去を思い出せない。なぜって、僕達という分かれた存在が、君の記憶をバラバラに持っているからさ。 ただ、それもそう多いもんじゃない。どうしてって、君には今の記憶がないからさ。 今、君は大人になり仕事をして、懐かしい旧友達と同窓会気分なのかもしれないが、それは君の妄想でしかない。 ここは君の見ている妄想の中さ。現実じゃない。夢でしかないんだ。だから、姿のない僕達に肉体があるように見えている。 酒と食べ物があるように見えている。匂いを感じる気でいる。味を堪能している気でいる。 思い返してごらん。君は今、どこにいる? あの事故の後、君はどこにいると思う? 自宅かい。居酒屋かい。海上かい。空中かい。宇宙かい。 違うよ。君は動けない。身動きなんて取れないのさ。あの事故で重傷を負ったから。 自由の無いここで、君は自分の中に閉じ篭った。そして僕達を作り上げた。 思い出しなよ。君の後ろに何がある?」
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