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俺の後ろ? カウンター席側の後ろには、草野達がいる。
上半身を捻って振り返ると、そこには草野しかいなかった。そして、居酒屋なんてものもなかった。あったのは白い正方形の部屋の半分だ。
草野は白いベッドの上にいた。黙って身を起こして、ベッドの上に座っている。その様子は、居酒屋の中となんら変わりない。
「あれ」
皆、いない。どこに行ったんだ。それよりも、ここって……?
俺は壁の方を向きながら寝そべっていた。いや、正確には、起き上がることが出来なかった。
足がない。俺の足がないんだ。どうして? なんでないんだ?
混乱の中で、あることを思い出した。修学旅行に向かう途中での、土砂崩れに巻き込まれたあの事故で、俺ともう一人を除いて全員が死亡したことを。
俺は重傷を負ったが、もう一人は奇跡的に軽傷で済んだらしい。
思い出した。俺はその日からずっと入退院を繰り返す生活だった。事故から生還してから三年眠り続け、そして目覚めてからは記憶が断片的にしかない。
きっと、あの藤沢を名乗る彼の言った通り、俺は多重人格のように、死んだ旧友達の性格を模倣し、現実から逃げていたのだろう。
「ここは、病院なのか」
草野の方に目を向けると、彼女は傍らに置いたバッグに荷物をまとめて入れているようだった。
「く、草野さん。俺、さっきから貴女と話してましたよね?」
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