濁った真実

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「ええ。話してました」 「なにを話してました?」 「色々ですよ。面白かったです。一人で何役もこなしてて、演劇を鑑賞しているような気分になりました。 でも、それも最後です。私、今日で退院するんです。火傷も良くなりましたから」 「待って。待ってよ、俺って一体誰なんだ? おかしいんだよ、自分が誰か判らなくなってしまった」 「さあ。私の同級生なのは間違いないです。なんでしたら、ご自身に訊いてみたらいかがですか」  草野は目線を俺には向けず、荷物をまとめる作業に没頭している。 「気付いたみたいだな。じゃあ、俺はいくよ」  脳裏に声が反響した。赤井の声だ。彼が消えると、俺は本当に幼い頃を思い出した。 「じゃ、次はあの世で」  犬川が呟くと、今度は事故の後、目覚めたことを思い出した。 「私達の演技、どうだった? 本当はもっと意味を持たせたかったんだけど、あの馬鹿が早とちりしちゃって台無しよ。 でも、手紙は本当にあるのよ。貴方のためのもの。どこにあるかは貴方自身が知ってるわ」  長谷川と内田が、そう忠告して消えていった。今度は小学校の低学年の頃をはっきりと思い出せた。 「アタシ達もいくわね」 「もそっと現世を楽しみたかったのさ」  菊地と鍋島が密やかにいなくなった。今度は、小学校の三年から四年辺りを思い出した。
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