濁った真実

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「ううん、あんまり役には立てなかったなぁ」 「ふん、くだらねえ」  渡辺と加賀谷が心から消えた。俺は、事故の後に目覚めた時のことを思い出した。  足がなくて、体は成長していて、親は少し皺が増えていて。世界が変わったようだった。  絶望した。たかが三年、しかし三年だ。あっという間の出来事だったはずなのに、すっかり世界に置いていかれていたあの時のことを思い出してしまった。  やめろ、やめてくれ。 「つかさ、お前最後まで俺とは話そうとしなかったのな。なんか寂しいもんだぜ? ま、いいけど。じゃあまたいつか」  坂井という存在が霧散した。もう話しかけようにも、俺の記憶の一部でしかなくなってしまった。  小学校のことを全て思い出した。酷い事故のことも、楽しかった休み時間のことも。あらゆる思い出が一度に噴出する。 「やあ、僕が最後みたいだね」 「君は、一体誰なんだ? 色々思い出したんだ。それなのに、どうして君だけ思い出せないんだ?」 「それはね、僕だけ違うからだ」 「違うって?」 「皆は姿を持っていただろう? だけど僕にはそれが無いんだよ。今のこの体が誰のものか判るかい? これは借り物。君の妄想。こんな姿だろうという理想でしかない。 僕は藤沢優輝だけど、君は藤沢優輝じゃない。君は僕だと思い込んでいるようだから、想像しにくいんだよ。 この姿に既視感があるんだろう? 簡単さ。これは自分の姿なんだよ。鏡を覗いてごらん。君のベッドの脇にある棚に置いてあるから」
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