濁った真実

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「さあて、僕も消えるよ。さようなら」  止めることも出来ないまま、藤沢の声は聞こえることはなくなった。  全ては、俺の脳内で起こっていただけのこと。あれは現実ではなく、自分では二度と立ち上がれない今の自分こそが現実の側だというのか。 「妄想、だったのか? 今までの全てが? 嘘だよ。だってそうだろう。そうだ、長谷川達の謎も残ってるし、俺にある問題なんてなにがあるっていうんだよ。そうさ、あれは夢、そしてこれも夢なんだ」  今までの俺の人生はなんだった? 眠っていただけの人生だったのか。  違う、違う、違う、違う!  今までのは全て俺の夢だ、幻想だ、妄想の産物だ!  あれが真実のはずがない。きっと今のこの光景も夢なんだ。夢に違いないんだ。  俺の感じる今この瞬間こそ夢幻なのだ。そうさ、長い夢を見ているだけに違いない。  おかしいな、いつ覚めるんだ。早く起きないと、みんなに会えない。同窓会にも遅れてしまう。 「私、そろそろ行きますね」 「え、ああ、うん」  草野のことを忘れていた。あれ、彼女は俺の目の前にいる。夢の中にいるには違いないが、他の皆とは違うな。なぜだろう。まあいいか。 「これ、どうぞ」  彼女が歩みより、俺の手が届く辺りに置いたのは、林檎が乗った皿と、果物ナイフだった。
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