濁った真実

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「よろしければ、どうぞ」  どうぞと言われても、俺は起き上がれないし、どうやって皮を剥けというのか。思いやりのない。  彼女はそのまま去ろうとしたが、出入り口で立ち止まる。 「あの手紙、なんだと思います?」 「は?」 「彼女達が遺したあの手紙です。貴方、自分で言ったじゃないですか。 あの手紙、なんだと思います? 貴方、言ってました。変な手紙を貰うって。それ、なんですか? 手紙なんて本当にあるんですか? それ、本当に実在してますか?」  自分の周囲を見回しても、それらしいものはない。じゃあ、あの話はなんだったんだ?  あれも、あいつらが言うところの、俺を覚醒させるための嘘かなにかだったのか。 「私、思うんです。今の貴方を見て思ったんです。それって、実在はしてないけど、貴方にとっては在るものなんです。 現実にないものを、あると思い込んでいるんです。 現実に戻りたくないから、妄想の世界に忘れ物をしたんです。謎を遺したんです。無意識に、無我の内に。 どうしてって、現実に戻りたくないから。夢の中に戻りたいから」  解ったように言ってくる彼女に腹が立つ。だけど、否定も出来ない。 「貴方はどこにいますか? ここにいますか。現実に存在してますか?」 「変な質問はやめてくれ。今この状況だって、俺は飲み込めていないんだ。これ以上頭がおかしくなるようなことは言わないでくれないか!」 「貴方、正常なんですか? 正常だって言い切れます? 自分が正しいって言い切れますか? 今の今まで自分の世界に閉じ籠っていたじゃないですか。 貴方には、なにが見えますか。自分の足がなくて、見知った人達の死んでいる地獄のような現実? それとも、たくさんの友達に囲まれた、和気藹々とした天国のような夢幻?」
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